NAS イルマティック / 著者 Matthew Gasteier
著者
Matthew Gasteier
訳者
押野素子
監修
高橋芳朗
出版社
スモール出版
ページ数 / サイズ
238ページ / 12.9 x 1.9 x 18.9 cm
発売日
2017/1/30
定価
1800円(税抜き)
-今なお語り継がれるヒップホップの歴史的名盤『Illmatic』は どのように生まれたのか?-
1994年、20歳の青年がリリースした1枚のアルバムが、ヒップホップ・シーンに革命を巻き起こした──。時代を超越した名盤、NAS『Illmatic』制作の秘密に迫り、アルバムを深く理解する手助けとなる書。
Nasのデビュー作にて最高傑作である"Ilmatic"と、作り上げていくまでの様子をとりあげた書籍。ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文、カニエ・ウェスト論やJ・ディラと《ドーナツ》のビート革命と同じく、本国のUSでは33 1/3シリーズとして出版されている。 ただ、日本では、当書籍のみ出版社が変わっている。
序章を含めて、10章で構成されていて、章題はBlack/White, Endigs/Beginnings, Youth/Experience, Death/Survival, Individual/Community, Fantasy/Reality, Faith/Despair, Tradision/Revolution, Breaks/Flows, Gift/Curseとなっている。 内容的には、こういった言葉を絡めつつ、Ilmaticでのデビュー前のNasの生い立ちや置かれていたクイーンズ・ブリッジでの閉塞感、 アルバムの制作過程、Nasが表現したかった思いなどが濃密・克明に描かれていて、逆にこれ以外のある意味余計なことに紙面を割いてないところが、 ありがたい。
Nas本人はもちろん、制作にかかわったLarge Professor, DJ Premier, Pete ROck, Q-Tip, MC Serchなどが登場し、特に制作陣が切磋琢磨して、 NYのBrightest Starのデビュー作を成功させようとする様子が描かれているところが白眉となっている。 また、二十歳そこそこだったNasがこういった大物Producerにも堂々と意見して、主張を通しているエピソードも何度かでてきていて、 流石の個の強さだと思った。
8章のBreaks/Flowsは、曲解説となっており、しかも55ページと最長の章になっている。各曲数ページの解説は、当時そこまで聞きこんでなかった自分にとって、 曲の理解に大いに役立った。 この機会にIlmaticを聴き返してみると、テクノロジーもまだ未熟で、ビートもシンプルだが、その分、熱気のすごさをあらためて感じることとなった。