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J・ディラと《ドーナツ》のビート革命 / 著者 Jordan Ferguson

Book Review

J・ディラと《ドーナツ》のビート革命

ヒップホップ史に輝く不朽の名作《Donuts》にはJ・ディラ最期のメッセ-ジが込められていた

jdilladonuts

著者

Jordan Ferguson, 吉田雅史 (訳・解説)


出版社

DU Books


ページ数 / サイズ

254ページ / 18.4 x 13.1 x 1.9 cm


発売日

2018/8/31


定価

1800円(税抜き)

- Q・ティップ、クエストラブ、コモンほか盟友たちの証言から解き明かす、天才ビートメーカーの創作の秘密。 -

不世出のビートメーカー、J Dillaが死の三日前にリリースし、結果的に遺作となってしまったサウンド・コラージュの傑作"Donuts"をとりあげた書籍。ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文カニエ・ウェスト論と同じく、本国のUSでは33 1/3シリーズとして出版されている。
構成的には、冒頭から3分の2くらいまでは、死の直前までの音楽的探訪が描かれていて、特にDetroitのHip-Hop事情、スラム・ヴィレッジの誕生、盟友Madlibとの邂逅、LA移住のいきさつと移住後の音楽生活、 己の命を削って創作に取り組む姿などが詳しく、描かれている。 本人が亡くなってしまっているので、本人のインタビューが無いのは仕方ないが、それを補完するように 取り巻き連中、母親のマ・デュークス、Quest Loveなど仲間だったアーティストのインタビューや言葉によって、肉付けがされていて、J Dillaのパーソナリティが浮かび上がってくる。 これに加え、J Dillaの紡ぎだすビートの変遷や着想の変化なども描かれており、Common, ATCQ, Q-Tip, Pete Rockなどがしばしば登場してくるので、このあたりはHip-Hopファンにとっては大変興味深いところだ。 ただ、二卵性双生児のようにお互い分かり合えた相手はMadlibだったとのことで、この辺も詳しく書かれている。 中盤以降は、そもそもの主題である"Donuts"リリースにあたっての動静や"Donuts"についての考察と続き、併せて、著者の死生観みたいなものも著されている。 そして、終盤は死後の出来事までカバーされている。
巻末には、訳者の吉田雅史さんによる丁寧な解説とJ Dillaのビートの変遷の分析、ディスコグラフィーまで掲載されており、本編の理解に役立って、有難かった。